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自然と品格、その間にある美しさ。
『stlll』のジュエリーが描く、ものづくりの世界

自然や風景の中にある、ひび割れや傷、朽ちていくものの美しさをジュエリーへと落とし込んでいるジュエリーブランド『stlll(スティル)』。
「自然さとジュエリーとしての品格のバランス」を大切にしながら、あえてダメージやいぶし加工を取り入れ、時間の経過とともに表情が変化していくジュエリーを生み出しています。
街の中で見つけた風景や、自然に生まれた形、そして受け継がれてきた職人の技術。さまざまなものからインスピレーションを受け、独自の視点でジュエリーを形にされています。その静かな佇まいの中に宿る品格の奥には、どのようなものづくりへの想いが込められているのでしょうか。
今回は、stlllのジュエリーが生まれる背景から、デザインへのこだわり、そしてこれから目指していくものづくりについて、デザイナー高橋和斗様にじっくりとお話を伺いました。

 

―ブランド名「stlll」の由来を教えていただけますでしょうか?

【高橋様(以下敬称略)】ブランド名は、英単語「still」に由来しており、「静けさ」と「未だ」という2つの意味を込めています。静かな街並みや受け継がれてきた技術を大切にしながら、身につける人の想いも、ジュエリーとともに時間を重ねることで、経年変化として刻まれていく。そうした時間の積み重ねを表現するようなデザインをジュエリーとして形にしています。
また、「未完成であること」も大切な要素の一つとして捉えており、身につける人自身がジュエリーとともに時間を重ね、その先の未来へとつないでいけるようなデザインを目指しています。こうした考え方が、ブランドの由来やものづくりに込められています。

―ありがとうございます。高橋さんご自身も職人技術やものづくりに関心をお持ちなのかなと思ったのですが、興味を持たれたきっかけは何かございますか?

【高橋】そうですね。僕の祖父が生物学の研究などをしていて、幼い頃から、そうした研究やものづくりに触れる機会が多かったです。そうした経験もあり、昔からものづくりには興味がありました。
自分で絵を描いたり、何かをつくったりすることも好きで、そういったことをずっと続けてきたので、自然とものづくりに惹かれていったのだと思います。

 

―お祖父様の背中を見ながら、ご興味を持たれたのですね。幼い頃から手先が器用で、クリエイティブなことがお好きだったとのことで、ジュエリーの道へ進まれたきっかけについて教えていただけますでしょうか。

【高橋】そうですね。最初から「ものづくり」と「ブランドの立ち上げ」が直接結びついていたわけではなく、まずは独学でいろいろと調べたり、実際にものを作ってみたりするところから始めました。

そうしてものづくりへの関心を深めていく中で、浅草の革工房や陶器などを見て学び、静かな街並みや廃墟のような空間にも興味を持つようになりました。

少し朽ちたり廃れてしまったものの中にも美しさがあることに惹かれ「ダメージを受けたものでも美しく見えるものとは何だろう」と考えるようになりました。その中で、ジュエリーというものが自分の表現に一番適しているのではないかと思いました。貴金属にあえてダメージを加えたり、廃墟のような静かな空間をイメージした表現を取り入れたりすることで、自分が感じていた世界観をジュエリーとして形にできるのではないかと考えました。

 

―背景や、時間を重ねてきたことが感じられたりするものに魅力を感じているのですね。素材に魅かれた理由をお伺いできますでしょうか?

【高橋】ジュエリーのベースにはSilver925を使用しています。Silver925に惹かれた一番の理由は、さまざまな技法を試していく中で、形の自由度が高い素材だと感じたからです。
鋳造やワックス、3Dなど、さまざまな技法を組み合わせることで、自分が表現したい形をより自由に作ることができる。その点にSilver925の魅力を感じています。
とくに、そういった経年変化や色の変化、加工によって表情が変わっていくところに、自分自身とても魅力を感じています。
また僕自身、「錆び手」という比較的錆びやすい体質で、人によって多少差はあると思うのですが、工具なども使っているうちに錆びてしまうことがあります。
ジュエリーを作り始めてから改めて気づいたのですが、工具などが錆びたりすることに苦労はしつつも、同じように時間の経過によってSilver925の表情が変化していくことに、面白さや魅力を感じていきました。










―ご自身の経験からも、ものが時間とともに変化していくことに対して美徳を感じられていたのですね。それはジュエリーにも通じる部分がありますよね。とくに、stlllの中でもいぶし加工を施した商品がありますが、何か意識してデザインに取り入れられているのでしょうか?

【高橋】Silver925は比較的変色しやすい素材なので、表情が変わってしまうことがよくおこります。そういった経験から「こうした変化がある素材を、どうしたらより美しく見せられるだろう」と考えるようになりました。そこで、最初からいぶし加工を施したり、少し使い込まれたような風合いを持たせたりすることで、時間の経過による変化もデザインの一部として楽しめるようにしています。
ダメージの入り方やいぶしの具合も、身につけていくうちに少しずつ馴染んでいき、その人だけの表情に変化していく。そういった考え方から、ブランドを始めた初期の頃は、とくにそうしたデザインのジュエリーを多く制作していました。


―身につけながら育てていくものとして捉えているブランドの世界観を感じました。そんなstlllのジュエリーの中で、特にこだわられている部分はどこでしょうか?

【高橋】一番こだわっているのは、自然さとジュエリーとしての品格のバランスです。先ほどあえてダメージを加えたり、使い込まれたような表情を出したりしているというお話をしましたが、ただ荒々しいだけのデザインにはしたくないと思っています。自然な風合いや時間の経過を感じさせながらも、ジュエリーとしての美しさや品格はしっかりと残す。そのバランスを大切にしています。
いぶし加工を施す部分と光沢を出す部分は、しっかりと分けるようにしています。ジュエリーとして綺麗に見えることも大切にしながら、そこにあえて加工をすることで、デザインとしての個性を出しています。
新品の状態で完成させるのではなく、最初の美しさと使い込むことで生まれる経年変化が自然に馴染んでいく、そのバランスを大切にしています。
単に新品らしい綺麗さだけではなく時間を重ねることで、その人自身のジュエリーとして仕上がっていくようなデザインを意識していますね。



―ありがとうございます。洗練されたデザインだなと感じているのですが、デザインを制作される際に制作上のこだわりがあれば、ぜひ教えていただけますでしょうか。

【高橋】制作では、彫りや叩きなどさまざまな技法を組み合わせています。彫りについても、いくつかの道具を使い分けていて、医療用のメスを使って彫ることもあります。また、打ち目を入れるための道具も自分で作っていて、鋳造した後に叩きを加え、あえてランダムな表情をつけるなど、独自の方法で仕上げています。
表面のデザインだけではなく、内側や細かな構造にもこだわっていて。例えば、角が立ちすぎていると着けたときに肌や衣服に引っかかってしまうことがあるので、そういった部分は丁寧に磨いて、身につけやすい形にしています。
彫金の技法だけでなく、ジュエリーの構造自体も3Dなどを活用して細かく設計し、そこに自分なりのオリジナリティを加えていく。そうしたさまざまな技法を組み合わせながら制作しています。

 


―細部までこだわって制作をされていることが改めて分かりました。stlllのジュエリーを実際に身につけていただくことで、どのような気持ちになっていただきたいですか?

【高橋】制作するまでの背景を知ってもらうこともそうなのですが、実際に目の前にして、身につけたときに気持ちが上がるものであってほしい、というのが一番かなと思います。
ジュエリーは、身につけなくても生活に困るものではないと思いますが、だからこそ、手に取ってくれた人に「身につけてよかった」と思っていただいたり、「これを身につける意味」を感じてもらいたいです。
それによって、自分自身の気持ちが上がったり、何か人生が良い方向に進んでいったりしたら、それが一番大事なことなのかなと思います。
ファッションとしての華やかさももちろん大切ですが、それだけではなく作品としての美しさやそこに込められた背景など、そういうものも両方感じ取ってもらえたらうれしいです。

 

―ありがとうございます。高橋さんご自身もジュエリーを身に着けることがお好きだったのでしょうか?

【高橋】ジュエリー自体も昔から好きでした。ただ制作をしていると、普段の服装も結構変わっていきました。作業をしていると、どうしても汚れが目立たない服や黒い服ばかり着るようになり、シンプルな服装になっていきました。
そんな中で、ジュエリーはさりげないアクセントになったり、品を添えてくれたりするだけではなくて、自分の個性が少し宿るような、小さな存在として身につけるものへと、徐々に変わってきたかなと思います。


―ありがとうございます。ジュエリーは同じものを身につけていても、その人が選んだ洋服や雰囲気によって、見え方が大きく変わるのが面白いですよね。そんなジュエリーは高橋さんにとってどんな存在でしょうか?

【高橋】自分自身あまり前に出て話すことが好きなタイプではないので、言葉で伝えるというよりは、ジュエリーを通じて今の世の中と関わっていけたらと思っています。

 

―とても素敵です。5年後、10年後、ブランドをどのようにしていきたいでしょうか?

【高橋】昨年から、国内のデザイナーズジュエリーのイベントに参加したり、ニューヨークのポップアップにも参加してきました。そういった活動を通して、海外の方にも少しずつ見てもらえる機会が増えてきました。
ただ「海外に挑戦する」ということを目標にするというよりは、日本のデザイナーズジュエリーや、ジュエリーを通したものづくりそのものを、もっと世の中に知ってもらいたいという気持ちがあります。
全国各地で、実際に手に取ってもらえる機会をもっと増やしていきたいですね。
また同世代の若い人たちに向けて、こういうものづくりがあるのだということを発信していきたいという思いもあります。
そして将来的にはお店を持ち、ただ商品を販売するだけではなくて、人と人、そして文化がつながれるような場所にできたらいいなと思っています。
インバウンドの方たちに向けても、日本のものづくりや文化を伝えながらいろいろな人とのつながりを作っていけたらいいですね。

 










―今後も目が離せない、高橋さんのご活躍を私たちも楽しみにしています。
素敵なstlllのジュエリーの中で、今一番おすすめしたい、ぜひ知っていただきたいジュエリーのデザインを教えていただけますか?

【高橋】「ワープリング」ですね。レイヤーでいうと「シャドーリング」もおすすめですが、ワープリングはとくに思い入れが深いです。これは、自分自身が彫金教室に通っていた頃からずっと制作していたものがベースになっています。
いくつかの丸線をねじったり曲げたりしながら、中空のような構造を作りつなぎ合わせています。このデザインが特徴的で、イメージとしてはひび割れた場所から植物が生えてくるような感じです。そういうイメージから制作していて、ブランドらしさだったり、少し無骨な部分だったり、そういったものがジュエリーとしてきれいに形になったデザインだと思います。

 

 

―ありがとうございます。独特な視点から作られているからこそユニークなデザインができるのですね。
最後にお客様へ一言お願いいたします。

【高橋】stlllのジュエリーを通して、ものづくりの背景や実際に身につけていくことで重ねていく時間を感じていただき、楽しんでもらえたらと思います。

 

―ありがとうございました。高橋さんだからこそ生まれる、stlllならではのデザイン性と、シルバージュエリーの魅力があるのだなと感じました。

 

当店スタッフのお気に入り、おすすめ商品を聞いてみました。

【小林】Snake earcuff です。
見た目の重厚感はもちろんですが、商品に込められている思いを読みさらに気に入っています。男女問わず使えるアイテムは自分用にももちろん、プレゼントにもおすすめのアイテムです。

【松澤】Rock pierce です。
本物の岩のような質感と、シルバーならではのキラキラ感が素敵なピアスです。都会的な輝き×自然界の岩の質感、両方のイメージを感じられるとても好みのデザインです。

【小松】水滴のような艶やかな表情がとても魅力的なリング「"Dew" ring 01」です。
個性的なデザインですが、意外とどんなスタイルにも合わせやすく、デイリーにさらっと身につけられるところもお気に入りのポイント。
シンプルな装いにひとつプラスするだけでも、さりげなく存在感を出してくれます。

 

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